あなたの街に本物のベトナム料理を。「やりたくない」を超えて気づいた、これからの時代の飲食店経営
ベトナムちゃん
オーナー
金子 真已 氏
「ベトナムちゃん」は東京・大久保に本店を構え、今回の取材先である沖縄にも店舗展開をしているベトナム料理店です。本場ベトナムで培った目利きと、20 年以上のキャリアを持つシェフたちが生み出す家庭の温かさを届けています。コロナ禍の真っただ中にオープンした「ベトナムちゃん北谷(チャタン)」。当初はデリバリーへの抵抗感が強かったという金子氏に、Uber Eats 導入の経緯や現在のデリバリーに対する考えなどを伺いました。
本物のベトナム料理を、町中華のように身近に
-お店のコンセプトについて教えてください。
コンセプトは「あなたの街のベトナムちゃん」です。どこにでもある名もない町中華のように、ふだん使いできるベトナム料理店でありたいと思っています。こどものころから身近にあって、大人になってもずっと食べに来てくれる、そんなお店を目指しています。
-どうしてベトナム料理店を始められたのですか?
私はベトナムに長く住んでいたのですが、日本に戻ってきたときに「ベトナム料理を食べに連れてって」と友人に頼まれても、私自身が食べさせたいと思うお店がなかったんです。料理が冷たかったり、量が少なかったり。温かい料理を一緒にみんなでわいわい食べるのが本当のベトナム料理だと思っていて、そのおいしさを日本人に知ってほしくてお店を始めました。その気持ちは今も変わらない原動力です。
シェフは 20 年以上のキャリアを持つ人でないと採用しません。日本のビザを取得するには 10 年以上の実務歴が必要なのですが、それだけでは足りないと思っていて。生活も落ち着いていて、心のこもった料理が作れる人を、私が現地に行って 2~3 回は面接してから採用します。ご家族にも会って、納得してもらって、日本に来てもらっています。食材に関しては、青パパイヤといった生鮮食品は沖縄産を使っていて、フォーやヌクマムという調味料などはベトナムのものを仕入れています。現地で食べるようなベトナム料理が作れる食材を、シェフたちがチェックしたうえで選んでいます。
-お店の内装のこだわりも教えてください。
東京も沖縄も壁の色はヤングバナナ色と呼ばれる鮮やかなグリーンで統一して、入った瞬間からベトナムを感じられるようにしています。あとは壁にベトナムちゃんの女の子のイラストを入れたり、私がハイビスカスの絵を描いたりして、手作り感を大事にしています。家庭的なアジア料理だからかもしれませんが、温かみをお客さまは求めていて、整いすぎていないことが居心地のよさにつながっているのかなと思います。
自身のこだわりと相反するお客さまのニーズ
-Uber Eats を導入したきっかけを教えてください。
北谷のお店のオープンは、コロナ禍の真っただ中でした。アメリカ人のお客さまが多い土地なのですが、デリバリーをお願いされても最初は全部断っていました。ぬるくなったフォーを食べてもらうなんて、想像したくなかったので。それでも近所の方が食べたいと言ってきてくださるので、丼に入れて提供するなんてことが続いていくうちに、本当に必要とされているんだなと気づき始めました。そこから容器に入れて販売するようになったら、あれもこれもテイクアウトできるようにしてほしいとリクエストされて。ちょうどそのタイミングで Uber Eats が北谷でもサービスを開始したので、「じゃあ、やってみよう」という気持ちで導入しました。
-導入にあたって、難しかったことはありますか?
北谷はアメリカ人のお客さまが多く、食の好みが本当に人それぞれで、はっきりしています。お肉を食べない方、野菜しか食べない方、唐辛子を何本も入れてほしいという方。そういう多様なニーズに応えるために、メニューをどう作るのがいいのか悩みました。あとは、ベトナム人のスタッフが使いやすいようにタブレットの設定が必要でしたが、慣れてくると案外使いやすかったようで、「めっちゃ簡単」って言っていますね。
そうですね、トッピングをかなり充実させています。アメリカ人の方だと思うんですが、レモンやパクチー、唐辛子の増量、ソースの追加などを有料オプションにして選んでもらうかたちにしたら、どんどん追加注文してくださるんです。やってみて分かったことですが、Uber Eats で頼まれるお客さまは「自分だけのご飯」という感覚で注文されているので、自分好みにカスタマイズできるようにしておくと喜ばれます。
Uber Eats 導入によって得られた気づき
-Uber Eats を導入してみて良かったと感じることは何でしょうか?
雨の日はやはり来店される方が少なくなるのですが、逆にその日は Uber Eats の注文が増えます。店舗の売り上げとは別の動きをしてくれるので、リスクヘッジとして本当に助かっています。曜日による波もほとんどなくて、安定感があります。あと、売り上げとは別の話ですが、配達パートナーさんに関してもうれしかったことがあります。ジムで会った方が私に気づいて「毎回配達に行っています。あのお店すごいですよね」と言ってくれて。どんな味なのか気になってご自身でも食べに来てくださって、それ以来お店のファンになってくれたんです。
-導入を通じて、自分自身が変わったと感じることはありますか?
「温かいものは店内で食べてほしい」という気持ちがなくなったわけではありません。でも、テイクアウトや Uber Eats を始めてみて、思ってもいないニーズがあることを知れました。自分の思い込みでお客さまの選択肢を狭めていたんだなと。これだけ多くの人に食べてもらって、喜んでもらって、私のこだわりは何だったんだろうと思いますね。これからの時代に飲食業をやっていくうえで、「自分の中だけで決めてはいけない」ということはとても大きな学びでした。
できないと思っていても案外解決できることは多い
-Uber Eats の導入を検討している方へのメッセージをお願いします。
まず「なぜやらないのか」をもう一度考えてみてほしいです。システムの使い方に不安があるから、容器を集めるのが面倒だから、写真の撮り方が分からないからなど、いろんな理由があると思います。でも、それが技術的なことや環境的なことなら、意外と簡単に解決できます。得意な人に助けを求めればいいと思います。私自身もタブレットの設定は分からないですが、店長が代わりにやってくれました。そういう人が周りにいなくても、飲み屋で隣に座った人に話しかけたら「やったことありますよ」と言ってくれるかもしれません。ちょっとしたことで解決できるのに、諦めているのはもったいない。世の中はどんどん変わっていますし、飲食店も変わっていかないと生き残れない時代だと私は感じています。
-最後に、金子さんにとって Uber Eats とは何でしょうか?
私にとって Uber Eats は、新しいインフラの 1 つだと思っています。アメリカ人のお客さまにとってはもはや当たり前のサービスで、なくてはならない存在になっています。今後はホテルや旅行者へのリーチなど、さらに可能性を広げていきたいと思っています。
取材後記
インタビューの中で、雨の日に「安全運転でね」と声をかけると、配達パートナーさんたちがうれしそうに、「ありがとうございます」と返してくれるのだと話す金子氏。Uber Eats によって輪が広がっていく現場の温かさを感じました。かつては「デリバリーなんて絶対ダメ」という強いこだわりを持っていた金子氏が、コロナ禍の沖縄で出会ったアメリカ人のお客さまたちに背中を押されて、少しずつ考え方を広げていったこと。その変化は、Uber Eats の導入という話にとどまらず、飲食店がこれからの時代をどう生き抜いていくのかという問いへの 1 つの答えかもしれません。
Azusa Miura