いつ頼んでも、おいしい。 こだわりと思いを貫く築地の江戸前寿司店
つきぢ神楽寿司 新館
青木 亮 氏
築地場外市場の一角で、江戸前寿司の伝統を守り続ける「つきぢ神楽寿司」。赤酢を使ったシャリや脂の乗った近海物を炙ったネタなどで、多くのファンを惹きつけています。築地を訪れる観光客のほか、湾岸エリアで暮らす方も通う人気店です。そんな同店が、コロナ禍での来店客減少をきっかけに導入したのが Uber Eats でした。今回は、店の顔として日々板場に立つ青木亮氏に、Uber Eats 導入の経緯やデリバリーにおける工夫、お客さまからの声について伺いました。
酒粕からつくる赤酢が守る、伝統的な江戸前寿司の味
-お店のこだわりを教えてください。
当店のこだわりは、江戸前寿司の伝統を継承していることです。今は白酢を使うお店が主流になっていますが、当店では酒粕を長期発酵させてつくる赤酢を使ってシャリを仕立てています。まろやかな風味が特徴です。もう 1 つの特徴は炙りです。脂の乗った近海物の天然魚は炙ることで、香りや風味がまったく違うものになります。お酒との相性もとても良いので、うちの売りとしてお客さまにお出ししています。
毎朝、担当のスタッフが豊洲市場へ買い付けに行っています。実際に目で見て選ばないと良いものかどうかわからないので、そこは欠かせません。長くお付き合いのある業者さんの協力もいただきながら、質の良い食材をなるべく手頃な価格で仕入れられるよう努めています。
-店舗に来られるお客さまはどのような方が多いですか?
築地という場所柄、近年はインバウンドのお客さまや築地の市場を楽しみに来られるお客さまが 8 割ほどを占めています。一方で、勝どきや晴海のタワーマンションにお住まいの方々にも徒歩やタクシーで気軽に立ち寄っていただいていて、地元のお客さまにも支えられているお店です。
思うようにいかなかった自社デリバリーから Uber Eats へ
-Uber Eats を始めたきっかけを教えてください。
コロナ禍で来店されるお客さまが少なくなり、売り上げを維持していくのも大変な時期でした。少しでも当店の味を多くの方に知っていただきたいという思いから、「一回やってみよう」という気持ちで始めたのが正直なところです。当時 4 店舗を展開していた中で、まずはこの新館でスタートすることにしました。
-Uber Eats 導入の前に、自社でのデリバリーにも挑戦されたと伺いました。
独自のメニューをつくって、自社での配達も試してみました。ただ、あまり反響は良くなかったです。支払いのシステムがアナログだったこともありますし、認知を広げるのも難しかったですね。そのあたりが Uber Eats ならうまくいくのかなという気持ちはありました。
-導入する際に不安はありませんでしたか?
正直、配達パートナーさんについて当時はいろいろな話を耳にしていたので、少し不安がありました。デリバリー業者さんを利用すること自体が初めてだったので、実際のところはどうなんだろうという気持ちもありましたね。あとは、商品の品質に関する懸念もありました。気温が高くなると食材が傷みやすいため、気温が高い時期はテイクアウトをやっていなかったんです。なので、デリバリーでもおいしい状態で召し上がってもらうための方法を考える必要がありました。
守りたいお店としての品質と味を、デリバリーでも
-デリバリーをする上で難しいと感じる点はありますか?
やはり鮮度が命なので、毎日ネタの状態や味を確認し、少しでも鮮度や品質に懸念があるものは絶対に使いません。気温が高い時期は保冷剤を多めに入れるなど、梱包にも気を配っています。
-握り方にも工夫があると伺いました。
お店で提供するときよりも、やや硬めにしているのと、少し大きめに握るようにしています。柔らかいと運んでいる途中で崩れてしまいますし、折の大きさに対して小さすぎると型崩れの原因にもなるので、そのあたりを調整しています。あとは、赤身と白身を交互に並べて美しく見えるようにして、見た目にもこだわっています。折を開けたときに「わあ」と思っていただけるような仕上がりを意識しています。
やはり間違いがあってはいけないので、オーダーが入るたびに、必ず 2 名で内容を確認しています。伝票に Uber Eats の注文番号を書き、さらに袋にも同じ番号を書くことで、二重に確認できる仕組みにしています。お店であれば間違えてもその場で直せますが、デリバリーは取り返しがつかないですし、お客さまの顔が見えない分、より慎重にしています。
-看板メニューである炙りを、Uber Eats では提供されていない理由を教えてください。
炙りは、炙りたてがおいしくて、時間が経つと風味が落ちてしまいます。同じ折に他のネタと一緒に入れると、香りや温度も移ってしまうので、Uber Eats では使わないと決めています。その代わりに、季節ごとのおすすめのネタを取り入れるようにしています。冬はヒラメ、夏はシマアジというように、旬のものを使い分けています。あと、店内でも人気の白エビの唐揚げやクエの唐揚げ、あん肝などは Uber Eats でお楽しみいただけます。デリバリーでもつきぢ神楽寿司の味を感じてもらうというところには、こだわりを持っています。
お客さまのニーズと合致したお店のこだわり
-Uber Eats を導入してみて、良かったと感じることはありますか?
スタートした当初は注文が入るかどうかもわからなかったのですが、少しずつお客さまからの評価をいただけるようになりました。Uber Eats をきっかけに当店を知って来店してくださる方がいらっしゃいますし、逆に「今日はお店に行けないから」と Uber Eats で注文してくださる常連さんもいらっしゃいます。配達パートナーさんに関しても、丁寧に対応してくれる人が増えて、お店としては安心です。
-実際に届いているお客さまからの声について教えてください。
決して安いものではないので、その分「いいものを頼んだな」と感じてもらえるように、包装紙で丁寧に包んでいるのですが、梱包が綺麗だというお声は多くいただいています。そのため、ホームパーティーなどのおもてなしとしてもご利用いただいているようです。あとは、「つきぢ神楽寿司はいつ頼んでもおいしい」と言っていただけることも多くて、うれしいですね。
担当の方が積極的に提案してくださるので、とても助かっています。たとえば、近隣で Uber Eats を導入する店舗が増えるほど、配達パートナーさんの数も増えて、エリア全体が盛り上がっていくというデータを示していただいたことがありました。競合しそうな気もしますが、配達パートナーさんが多いほど注文が入ってすぐに届けられるようになり、それが当店を利用される方の満足度にもつながる、という話です。他の店舗さんから Uber Eats の相談を受けたときは、担当の方を紹介することもあります。他にもさまざまなデータを示しながら背中を押してもらえるので、こちらも思い切って挑戦しやすいです。
-最後に、Uber Eats で成功する秘訣を教えてください。
デリバリーだからといって、特別なことをしているつもりはなくて、お客さまのことを思ってやっているというところでしょうか。その思いが伝わっているからこそ、リピーターの方にも、新しいお客さまにも選んでいただけているのかなと思います。
取材後記
取材当日、築地場外市場を歩くと、朝から昼にかけては外国人観光客があふれていました。しかし、昼を過ぎると人の波は落ち着き、夕方になると街の雰囲気は一変。残念ながら夜まで滞在はできなかったのですが、常連のお客さまが暖簾をくぐる姿が想像できました。
昼と夜、店内とデリバリーと、どのような場面で、どのようなお客さまに向き合うときも、青木氏が大切にしていることは変わりません。取材の合間に語ってくれた職人修行のお話の中で、「寿司職人はお客さまに育ててもらうもの」という言葉が強く印象に残りました。目の前のお客さまと向き合い続けることの積み重ねが、つきぢ神楽寿司の今の人気をつくっていると感じた取材でした。
Azusa Miura