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マーチャント, ストーリー

ワンオペでも回せる 飲食店の運営メソッド

2月28日 / 日本
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株式会社 Pass
松本 一也氏

株式会社 Pass は、イートイン、テイクアウト、デリバリーの 3 本柱を通じて、不況や感染症の影響を受けにくい強い飲食店づくりを目指す企業です。同社が運営する「オーガニック日本茶と畳カフェ TEATATAMO!」や、バーチャルレストランフランチャイズ BSS(ブランドシェアリングサービス)を通じ、効率的で利益率の高い店舗運営モデルを確立しています。
今回は CS(カスタマーサクセス)責任者の松本一也氏に、バーチャルレストランを効率的に運営する方法、特に小規模店舗、少人数経営の中で、実店舗とデリバリーをスムーズに両立させる工夫について伺いました。
 

1.ワンオペでの店舗運営において、業務効率化や従業員負担の軽減のために工夫している点はありますか?

実店舗とデリバリーの両方を運営する際、まず着手したのが「食材の統一化」です。例えば、実店舗で運営している「オーガニック日本茶と畳カフェ TEATATAMO!」で使用している抹茶やタピオカといった素材を活用し、デリバリーブランド「至福のクレープ」や「タピオカわらびもち Tapiwara」を展開するなど、食材・資材を流用する形でデリバリーブランドの立ち上げを行っています。

また、複数のデリバリーブランド間でも食材・資材を共通化することで、現在 3.5 坪ワンオペレーションの店舗で 8 つのデリバリーブランド(合計 120 種以上のメニュー)を提供していますが、実際に使用する食材は約 50~60 品に絞り込んでいます。これにより、食材管理を効率化するだけでなく、食品ロスを防ぎ、調理工程のシンプル化にもつながっています。
次に工夫した点は、仕入れ先の多重化とリスクヘッジです。昨今、食材費の高騰や調達リスクなどさまざまな課題がある中、弊社では仕入れ先を 2 社以上確保し、一方で調達できない場合はもう一方を利用する形でリスク分散を行っています。万が一どちらでも調達が難しい場合は、該当食材を使ったメニューを一時休止するなどして、世界的な食材不足や価格高騰にも柔軟に対応できる基盤を構築しています。

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2.イートイン、テイクアウト、デリバリーの 3 本柱を作ろうと思ったきっかけは何ですか?

我々はもともと銀座で居酒屋を経営していましたが、コロナ禍で来客数が激減し、やむを得ず撤退しました。その後、より柔軟性の高いビジネスモデルを模索し、デリバリー中心の経営へとシフトしました。創業当初はコロナ禍の影響で店舗への来客が見込めず、売り上げの 100% をデリバリーが占める状況でした。しかし、これが功を奏し、Uber Eats のレビューを活用して商品の改善を重ねた結果、短期間で成功モデルを構築することができました。現在では、店舗での売り上げとデリバリーの売り上げをバランス良く成長させ、安定した収益基盤を築いています。
 

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3.ワンオペで効率よく利益を最大化するために、まずは何から始めたのですか?

3.5 坪という狭い店舗環境で、食材の厳選と簡易レシピの導入を進め、1 人でも運営できる仕組みを整備しました。例えば、調理に時間がかかる食材や、仕込みが必要な原材料は本部で事前加工を行い、店舗には仕上げるだけの状態で配送。これにより、店舗では追加の人件費をかけず、手間を最小限に抑えた運営が可能となっています。このような形でビジネスモデルをチューニングし、フランチャイズ展開を進め、現在では全国の加盟店を支援しています。
その他、食材・資材の保管場所も、定位置での管理を徹底し、何がどこに何個あるかを見える化することで、探す手間やアイテムの過不足も未然に防いでいます。その結果、ワンオペレーションで現場業務から発注業務までを、一気通貫で対応できるようになりました。その知見は、フランチャイズ事業においても加盟店の棚割りや発注フローの最適化にも活かせております。

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4.実店舗とデリバリーの注文が一気に集中した場合の対策はどのようにしていますか?

来店客を優先しつつ、デリバリーの注文を迅速に処理するため、調理工程の短縮を徹底しています。例えば、デリバリー用のカップにはブランドごとのシールを事前に貼り、製氷機の前にずらっと並べておくことで、調理時間を短縮しています。
その他、実店舗のピーク時間とデリバリーのピーク時間が重ならないようブランド選定を行っています。その結果、実店舗が忙しい時間はデリバリーの注文は少なく、デリバリーの注文が集中する時は実店舗のお客さまは少ない、良いバランスになっているんですよ。また、デリバリーの売り上げ期待値があるブランドを夜に導入することで、必然的に実店舗の営業時間が延びることになります。その結果、夜遅くまで空いているカフェとしてお客さまに認知していただき、普段アプローチできなかった層を獲得できたのも大きな収穫でした。

複数のバーチャルレストランを営むことで、忙しくないタイミングに売り上げが立つ。カフェ営業だけでは獲得できなかった層にリーチできる。複数のブランドからコンスタントに注文が入ることで、配達パートナーさんから「ここなら何かピックアップがある」と認知され、配達パートナーさんが常にアサインされる状態が維持できる。もう一石三鳥って感じです。
 

5.今後の展望を教えてください。

コロナ禍の時とは変わり、バーチャルレストランも価値あるブランドだけが残る市場になってきています。今後は、バーチャルレストランの価値あるブランドをさらに育成し、フランチャイズ加盟店へのサポートを強化していきます。また、これまでドリンクやスイーツを中心に展開してきたブランド構成から、ランチタイム向けのフードブランドへ広げ、新たな顧客層を取り込む計画です。

我々は、コロナ禍で飲食店を辞めた経験がある。飲食店の看板を下ろすとき、心にズシっときたんです。今まで来ていただいたお客さまが、「また来るね」って言ってくれたけれど、その「また」を守り続けるとができなかった悔しい経験がときどき頭をよぎります。今でも、看板を下ろす前にバーチャルレストランという手段を知っていたら違う展開があったのではないかと思うことがあります。
コロナが落ち着いた今でも、飲食店の倒産件数は多い。だからこそ、イートイン、テイクアウト、デリバリーの 3 本柱にすることで、経営基盤を強化する。あの時感じた悔しい思いを、加盟店様をはじめ、他の飲食店経営者の方にも味わってほしくない。その想いが、我々の原動力となっています。

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まとめ

株式会社 Pass が運営する PassDelivery は、狭い店舗でもワンオペで効率よく運営するノウハウを確立しています。ピークタイムが異なるバーチャルレストランを複数営むことで、空き時間、売り上げのない時間を極力作らない仕組みを整えています。このような運営スタイルは、飲食店経営における新しい可能性の一つと言えるかもしれません。松本氏のお話から挫折を経験し試行錯誤を重ねる中で培われた強さと、飲食店経営の未来を切り開こうとする挑戦心が伝わってきました。そして何より、全ての飲食店への深い愛情を感じる瞬間が随所にありました。

投稿者: Azusa Miura

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