Uber Japan は、2024 年  4 月 8 日より自家用車活用事業(以下、タクシー会社によるライドシェア)と 2024 年 3 月より規制緩和後の自家用有償旅客運送制度(以下、自治体によるライドシェア)の導入支援をパートナーのタクシー会社や自治体などに提供しています。導入支援を開始しておよそ一ヶ月が経過し、現状についてお伝えします。

 

はじめに、タクシー会社によるライドシェアおよび自治体によるライドシェアへの規制緩和は、ドライバー不足の解消に向けた一歩として大きな前進であり、政府の迅速な決断と推進力は他国の導入事例と比較しても称賛に値すると認識しています。Uber は “Go Anywhere” をミッションと掲げており、日本においても、 だれでも自由に行きたい場所に行ける世界を実現したいと考えています。今回の規制緩和はそのミッションの達成にも大きく寄与するものであるため、タクシー会社や自治体などと連携し、ライドシェアの導入支援に注力しています。まだ開始しておよそ一ヶ月ではありますが、今後の普及と拡大につながる可能性も見えています。

 

タクシー会社によるライドシェアの現状と可能性

タクシー会社によるライドシェアはまだ始まったばかりですが、ドライバーに興味がある方が多く、まだ台数は少ないものの、時間あたりの運行回数や売り上げなどの面で手応えを感じています。タクシー会社によるライドシェアは、現在、東京と京都で展開しています。今後も対象地域のパートナータクシー会社に対して、全面的に導入の支援をして行きたいと考えており、十数社のタクシー事業者と連携を進めています。ドライバー・稼働台数は、4 月末時点で東京では約 25 台、京都では約 20 台です。現在各タクシー会社が採用・選考や研修、保険登録などを進めており、今後増えていく見込みです。

 

Uber Japan では、希望する配達パートナーを提携する一部のタクシー事業者にご紹介する取り組みを 2023 年に開始し、タクシー会社によるライドシェアだけで 1,000 件を超えるお問い合わせをいただいています。すでに、紹介した方で運行を開始されている方もおり、運行回数や売り上げは非常に好調です。

また、Uber のアプリでは、乗車するサービスを選びたいお客さまの利便性を考慮し、タクシー会社によるライドシェアについては「自家用タクシー」としてお客様が選択できるようになっており、現在は多くの海外からのお客様が利用されています。Uber アプリ上での比較では、1時間あたりの乗車単価は同じ時間のタクシーの約 1.2 倍となっています。海外のお客様は、自家用車を使ったライドシェアを日常的に使っているため抵抗がなく、また移動距離が比較的長い方が多いため、客単価がタクシーよりも高い要因の一つにもなっていると推察されます。

 

一方で、すでに延べ 300 人以上のドライバーが運行を開始していると聞いていますが、既存のタクシー会社社員や、一度離職したタクシードライバーが戻ったケースも多く、新規ドライバーがどの程度参加したかについては、検証が必要です。 2019 年比で約 6 万人近くドライバーが減少しており、さらに少子高齢化や人手不足が深刻化する中で、国内の高齢者や海外からのインバウンドによる移動需要を満たしていく必要があります。タクシー業界は、運転手の絶対数の減少だけでなく、20 〜 30 代の運転手が全体の約5%に対し、60 代以上が 60 %超という年齢分布となっており、将来を担う人材が圧倒的に不足する構造的な問題を抱えています。仮に自家用ドライバーの稼働時間がタクシー運転手の半分程度とすると、2019 年の水準に戻すだけで 12 万人の副業ドライバーが必要な計算になり、さらなるドライバー確保の施策が必要です。

 

また、現状のタクシー会社によるライドシェアの制度は、以下のような点でタクシー会社・運転手のメリットが限定的で、特に中小規模のタクシー会社において、積極的な導入につながりにくくなっており、今後の改善が期待される点と考えられます。

 

  • 雇用に限定された契約形態:契約形態が実質的に雇用に限定されている。一定以上シフトに入ることが期待される一方で、週の稼働時間は、原則タクシー会社にとって社会保険負担がない 20 時間未満となっており、運転手の稼働時間の裁量が極端に小さい。また、タクシー会社が消費税の仕入税額控除をできない、ドライバーが経費の計上をできないなど、税務上のデメリットがある。
  • 複雑な地域・時間・台数制限:地域・時間・台数の厳しい制限により、タクシー会社の運用が複雑になっている。また週あたりの運行可能時間が短い地域では、売り上げ貢献が小さく、新事業を立ち上げる労力、運行管理のコストに見合わないため、タクシー事業者にとって開始・継続するメリットが少ない。
  • 限定的な需給調整機能:需給調整の手段として、上述の複雑な制限を課しているが、規制当局の負担が大きいうえ、天候の変化やイベントといったリアルタイムの需要増加には対応できない。またアプリ配車の平均マッチング率のみを見て台数上限を決めているが、地域全体の移動需要に対応できない可能性がある。
  • 中小タクシー事業者に不利な台数配分:台数配分の申請がタクシーのライセンス数を上限としており、日本で多い中小のタクシー会社では、配分数が非常に小さくなるところが多い。複数地域に拠点を持つグループ企業であれば、ノウハウの共有によって立ち上げの労力を低減できるが、中小のタクシー会社は、少ない台数のために一から検討する必要がある。

 

自治体によるライドシェアの現状

自治体によるライドシェアは、規制緩和後、石川県加賀市で加賀市観光交流機構が運行主体となり、Uber  がアプリを提供し、加賀第一交通が運行管理を行う三者協力体制で実施しています。加賀市では、指定された運行時間であればいつでもドライバーは自由に運行を開始でき、自由にやめられます。また、ダイナミックプライシング(変動運賃制)の導入が認可されたため、柔軟性の高いライドシェアが実現され、ドライバーや地域の足の確保が徐々に進んでいくと考えています。

 

加賀市が運行を発表された直後から、住民の方の関心は高く、70 名以上の応募がありました。書類などの選考や研修などを通過された方が、ドライバーとして稼働されています。ライドシェア開始当初で約 15 名が運行されており、今後数十名に増える予定です。昼間にお蕎麦屋さんを営まれている方が営業時間外に運転されたり、運転代行会社を経営する方がダウンタイムの日中に運転されたり、自動車学校の教官がシーズンオフにドライバーをされたりと、土地勘のある住民ドライバーが、隙間時間に地域貢献をされています。

また、Uber アプリは 70 以上の国で利用され 50 言語に対応しているため、加賀市では海外のお客様も乗車されています。

 

今後の取り組み

海外でライドシェアを体験した日本人の8割以上が、日本でのライドシェア導入に肯定的であるにもかかわらず、まだ使ったことのない人の利用意向は低く、その理由としては安全性への不安があげられています。Uber では、テクノロジーを活用した安全対策を駆使しており、多くの地域で、Ube rを利用する理由の上位に安全性が挙げられています。日本は、海外諸国と比べても治安が良く、車両やインフラが整備されており、おもてなしを大切にする人々が多いため、むしろライドシェアをより安全に運行する土台が整っていると考えます。

 

海外の経験から、ライドシェアは移動需要そのものを拡大し、経済活動を活性化することが分かっています。柔軟な供給の確保(契約形態や地域・時間制限がない)やダイナミックプライシングの導入によって、これらの効果が最大限発揮されます。タクシー会社によるライドシェアの制度などをさらに改善していくことで、経済の起爆剤となりえるポテンシャルを活かすことができると考えます。

Uber は、日本でも導入されたライドシェアが、タクシーやその他の公共交通と同様に、日本中の移動の自由を支えるものになっていくよう、世界中で蓄積された経験や知見を最大限提供し、政府やタクシー会社、そしてユーザーの皆さまと取り組んでいきたいと考えてます。そして、この議論をここで終わることなく、日本の発展に寄与するために最も効果的な形で継続されることを期待しています。