玄米とカフェ TANTON
新井健太氏
Uber Eats の店舗の中に「VR(バーチャルレストラン)」があるのをご存じですか?デリバリーのみで運営する、実店舗を持たない飲食店のことです。例えば大きなフライヤーのあるレストランが唐揚げ専門店を出したり、夜営業の焼肉店がランチタイムにハンバーガー専門店を出すなど、実店舗とは別ジャンルのお店を運営する場合もあります。
この「VR」によって、売り上げを実店舗以外にも伸ばしているのが、東京都の清澄白河にある「玄米とカフェTANTON」です。実店舗のデリバリーに加え、VR で「肉と玄米 TONTON」と「サンドイッチとサラダ TANTAN」の 合計 3 店舗を Uber Eats 上で展開されています。
今回はオーナーの新井氏に、VR 運営についてや、プロモーション活用の工夫などについて伺いました。
1.どんなお料理を提供されているのですか?また、メニュー作成で工夫されていることはありますか?
お店では、玄米を軸にした料理を提供しています。デリバリーにおいては、脂でジューシー、クリームたっぷり、というような背徳感があるけれどつい食べたくなってしまう料理か、または素材を活かした体に良いヘルシーな料理か、どちらか両極端に振り切った方が良いという考えがありました。そこで、ヘルシーな料理を出すことに方向性を定め、このようなメニューのお店を始めました。メニュー作りでは、玄米と塩麹を使ったメインディッシュにサラダなど、バランスを考えたメニューを意識しています。
また、私は、ずっと飲食業で働いてきたこともあり、人が食べたいと思うものを考えることが好きなので、お客さまの立場になってメニュー作成をするようにしています。
2.「VR(バーチャルレストラン)」を知ったきっかけについて教えてください。
実は、以前働いていたステーキ店が VR のカレー店もやっていたので、その時に VR の存在を知りました。そのため、「玄米とカフェ TANTON」でも、 VR 展開は開店前から考えていました。駅から離れた場所に出店したため、お客さまに来店していただくだけではやっていけないと考え実店舗をオープンしてすぐに Uber Eats に VR の 1 店舗 目を申請、 2 〜 3 か月後に、VR の 2 店舗目を申請しました。
VR の 2 店舗は、私は過去にイタリアンレストランやカフェ、ステーキハウスで働いていた経験があるので、その経験を活かして提供できるメニューで始めました。VR の 2 店舗で提供しているしょうが焼きは、前に働いていた店で大人気だったレシピを元に作成したものなんです。お店をオープンしたのは 2021 年、コロナ禍の最中だったので、当時はデリバリーの方が売り上げが高くとても助けられました。現在は、実店舗の売り上げが 6 割、デリバリーが 4 割程度に落ち着いています。
3.VR を含め、Uber Eats 上で 3 店舗の運営をするにあたって、オペレーションや仕込みなど工夫されていることはありますか?
全てのメニューが注文を受けてから 3 分以内に完成するように仕込みをしています。一番早いものだと 40 秒程度で完成します。料理は全て 8 割程度まで作っておき、店内にある 3 つの湯煎ポットなどを活用して短時間で完成させています。逆に言えば、仕込みをした上で 3 分以上の時間がかかるものはメニューに入れていません。
普段はそこまで忙しくないのですが、混雑時、突然 10 個、 20 個のデリバリー注文が、しかも全て異なるメニューで入るとさすがに慌ただしくなります。幸い、実店舗に来ていただくお客さまは時間に余裕のある方も多く、キッチンの慌ただしい様子をご覧になって、「ゆっくりでいいよ〜」と声をかけていただくこともあります。また、Uber Eats の画面も「ビジーモード」を有効に活用することで注文者の方に時間が かかることを理解していただいています。現在は、実店舗に来ていただいたお客さまを優先しつつ、デリバリーの注文に対応する、というスタイルをとっています。
オペレーションですが、キッチンは平日 2 名、週末 3 名で対応しています。特にデリバリー専用のスタッフを配置しなくても、実店舗とデリバリー 3 店舗分の注文に対応できています。
4.「メニュー商品の割引」のプロモーションを積極的に活用されていますが、プロモーション活用における工夫はありますか?
Uber Eats には、「Uber One」というサブスクリプション(定額)サービスがあり、メンバーになれば 1,200 円以上(手数料除く)の注文時に配達手数料が 0 円になるので、Uber One メンバーの方を意識した設定にしています(※一部店舗については対象外となります)。Uber One メンバーの方は、Uber Eats を頻繁に利用し、 なおかつ、1,200 円以上の注文をする方が多いため、プロモーションで割引をして1,200円に近くなるようにメニュー料金を設定しています。メンバーの特典の配達手数料 0 円とプロモーション適用により、さらにお得感を感じられるように工夫しています。
そしてもう一つは、食材のロスを減らすためです。実店舗で、その日中に使い切りたい食材があった際に、その食材を使うメニューにプロモーションを適用しています。当店では、廃棄を極力出さないように意識をしていますが、プロモーションを活用することで食材のロスをほぼ無くすことができました。何もしなければ廃棄になってしまう食材も、Uber Eats で売り上げにできることは当店にとっても、サスティナブルという観点でも良いことだと思っています。プロモーションの設定も、店舗でいつでも自由に操作ができるので、柔軟に活用ができる点も良いと感じています。
5.デリバリー用の容器はどのようなものを使っていますか?
コーンスターチ(とうもろこし)由来、バイオマス素材の容器を使っています。実は、以前働いていたお店で、プラスチック容器を使っていたのですが、購入者から「環境に配慮していない」という指摘を何度か頂いたことがありました。味はおいしいのに容器が原因で評価が上がらないという経験があり、当店では最初からバイオマス素材にしています。ガパオライスやヤンニョムポークなど混ぜて味わうものは仕切りのないもので、しょうが焼きなどは仕切りのあるものを使っています。
実はデリバリーを開始する前に、注文者様のところに届くときの料理の状態を把握するため、店舗から自宅にデリバリーを注文して確認しました。いくら店舗で良い商品を作っていても、届いた際の印象が良くないともったいないと思うので、注文者様に届いた商品の状態まで考えるように意識しています。
6.これから Uber Eats を始めようと考えている、または VR を検討している人に、アドバイスをお願いします。
人手を増やさずにできる範囲で始めてみるなど、営業中に少しでも手が空いている時間があるのならば、ぜひやった方がいいと思います。そして注文者様にとって分かりやすさを追求することが大切です。例えば、実店舗は「cafe TANTON」ですが、 Uber Eats 上 では「玄米とカフェ TANTON」にして、店舗名から何が食べられるのかすぐに分かるようにしています。また、メニュー名も、イタリアンの「ポルケッタ」は「豚肉の〇〇巻き」と明記するなど、どんな料理なのかが分かるメニュー名にした方が良いと思います。注文者がイメージしやすいことは重要です。
今振り返ってみると、デリバリーはもちろんですが、 VR をすぐに始めたことにより、想定以上に早く軌道にのれたと思います。実際はこんなにオーダーが入ると思っていなかったので、これ以上デリバリーのオーダーが増えると店舗が回らなくなる心配も少しあります。Uber Eats のパートナーになって本当に良かったと実感しています。
まとめ
今後は、実店舗でお酒を、そしてデリバリーでおつまみを提供したいと話す新井氏。VR を展開することにより、1 店舗のみの運営よりも Uber Eats 上での露出が多くなり、通行人が少ない立地の店舗でも売り上げを伸ばすことにつながるかもしれません。また新井氏のお話から、プロモーションを目的を応じて活用することで、効果的にお店の利益に結びつけられることが分かります。Uber Eats では売り上げ拡大に有効なさまざまな手段をご用意しています。ぜひ、それぞれの目的や段階に合わせてご活用いただければと思います。
■ Uber Eats:玄米とカフェTANTON 肉と玄米TONTON サンドイッチとサラダTANTAN
■ Instagram:https://www.instagram.com/cafe_tanton