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マーチャント, ストーリー

基準値と解決策を明確にすることでキャンセル・不受理率は下げられる

3月3日 / 日本
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X Kitchen
CEO
山路健一郎氏

デリバリー事業において、店舗側の事情でキャンセル・不受理になる注文は 1 件でも減らしたいところです。しかし実際は、実店舗でのピークタイムとの重なりや想定外のトラブル、オペレーションの問題などのさまざまな要因が重なった結果、不本意ながら、注文キャンセル・不受理となるケースも多くみられます。

東京・池尻大橋にある株式会社 X Kitchen(エックス キッチン)は、データ分析を基盤としたゴーストレストランブランドの開発・運用を行う会社です。フランチャイズ加盟店は現在約 1,000 店舗にのぼり、それぞれの店が、実店舗に加えて Uber Eats においてゴーストレストランを展開しています。特に注目すべきは、全加盟店での平均注文完了率は98% に達し、キャンセル・不受理率はたった 2% にとどまっているという点です。

「飲食店が潰れない未来」をスローガンに掲げる X Kitchen では、どのような取り組みを行うことで、加盟店の注文キャンセル・不受理率を抑えているのか。X Kitchen の CEO である山路健一郎氏にお話を伺いました。
 

1.X Kitchenでは、Uber Eats での注文完了率向上に向けてどのような取り組みを行っていますか?

まず、フランチャイズ加盟店様にご契約いただいた後、オープン前に弊社の SV(スーパーバイザー)のチームとミーティングをします。さらに「オンライン率」、「評価」、「セールスの注文」、「不成立とキャンセル注文」、「営業時間」、この 5 項目において基準を下回った場合は制限があり、逆に上回った場合は特典が付与されることを伝え、基準に沿った運用をしていただいています。
具体的には、不成立とキャンセル注文に関しては、目標を1% とし、順調にいけば 98% の注文完了率で運用していただく。その反対に、下限値は目標 3% とし、97% 以上の注文完了率は最低限出していただくことを店舗さまに依頼しています。
目標値を上回った場合の特典として、ゴーストレストランのブランドを導入いただくときの加盟金が開始時より低価格になることがあります。反対に下回った状態が継続した場合は、アカウントの停止のほか、Uber Eats での店舗の表示範囲の縮小などの制限があります。弊社では 加盟店様に 1 店舗あたり大体 3 業態のゴーストレストランのブランドを運営していただくのですが、導入時は大体 1〜2 業態から始まるので、下限値を下回った場合は、追加ブランドの提案をしないといった規制も設けています。
ただ、この項目は、店舗様側も努力いただいているので、ほとんどの店舗様が 2〜3 項目をクリアしている状態です。なので、基準達成率はほぼ 100% に近い状態ともいえます。

2.注文のキャンセル率や不受理率を減らすために、最も効果的だった施策は何ですか?

基本的には店舗様のルーティンになるのかと思うのですが、朝しっかり仕込みをして、お店をオープンして営業してきちんと閉める、という流れを作ること。そのために、弊社では週次、月次のレポートをお渡しして改善依頼をしていきます。店舗様に、週 1、または月 1 で成績表のようなものを渡し、それを確認し直していく癖をつけていただく。これが地道ではありますが、最もインパクトのある施策ですね。
具体的には、店舗様に運営状態を知っていただくため、各担当 SV が、LINE グループで各店舗の運営状態に対するレポートを送付しています。その先は、SV が店舗に電話をかけたり、ミーティングを行うなどにより問題点を細かく洗い出していく。
例えばですが、ランチタイムのキャンセル率が高い場合、それを直しましょうと提案し、細かい要因の分析を SV と店舗様とで共有していく。もしピークタイムと重なってデリバリーのオーダーが受けきれないという話なら、普段の準備時間の倍の時間を設けていただくよう依頼したり、仕入れの量をコントロールすることにより改善していく。
メニュー構成に関しても、オーダーが入ってから提供するまで 5 分以内で作れるものにするという工夫も行っています。
また、もちろんジャンルに関しても、例えば中華の店舗様であれば、ゴーストレストランでは炒め物を中心としたメニュー展開にするなど、業態と食材の親和性の近いものを提案していますね。
店舗によっては、ゴーストレストランを始めたけれど、注文数が少ない・売り上げが伸びないという場合もあります。その際はやむを得ず業態変更を依頼しています。地域により売り上げの差などもあるので、その店舗様に合う業態や、近隣店舗で実績が出ている業態などの提案をしています。全店舗中、月に 20 業態ほどは、追加変更をしている状況です。

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3.店舗側で注文をキャンセルする主な原因は何ですか。改善方法について教えてください。

やはり、ピークタイムでのキャンセルと、食材の準備が整っていない、この 2 つが大きいと思いますね。改善方法として、1つはキャンセルすることによるマイナスがあることを認識していただくこと。レポートと合わせて運営状態が良い店と悪い店を比較し「これくらいの差が出ていますよ」といったことを伝えていますね。弊社の人間が店舗様に上から物を言うようなことはしたくないので、同じ目線に立ち、直せるものを一緒に直していくように、SV が電話をかけたり、場合によっては会いに行き、その場で直せるものは直します。
店舗様の目線に立って話すことは大事だと思っています。何か自分たちが要望を伝えたいことがあるにしても、店舗様の営業負荷を軽減するための解決策をまず提示し、できればその場で直す。そのようなことをした上で、それからこちらの要望を話すようにしています。
そもそも弊社のスタイルは、飲食店様のキッチン内において、追加で売り上げを伸ばすために、自分たちが作ったデリバリーブランドを入れていただく。そのようなモデルなので、店舗様にとって役に立っているのかどうかが最も重要だと思っています。我々の業態として、サービスとして価値のあるものを提供するのが前提、大事だからです。

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4.注文完了率を向上させるために、データをどのように活用していますか?

まずは、各店舗様にレポーティングで、先週はいくつオーダーが入り、キャンセルは何件で、何% であること、また、先週、先月と比べてその数値がどうなっていて、基準に対して上なのか下なのか、などを伝えるところからですね。まずは数字を把握していただき、今どのような状況なのかを理解していただきます。店舗様の諸事情などでうまく運営できない場合などには、他の店の参考事例を紹介し、改善の方法を一緒になって考えます。その反対で、うまくいっている店舗さまのところへはインタビューに伺い、それを YouTube にアップして共有しています。今後も「こういう問題に対し、このように解決をしました」というストーリーを短い動画にして、多くの方に見ていただき、参考にしていただければと思っています。
そのほかに、過去に起きたトラブルと解決策などは、社内でトラブルシューティングとしてマニュアル化していますね。「Wi-Fi の状況が悪い」「メニューの変更ができない」「どこから発注していいかわからない」といった多くの店舗様で最初にぶつかるようなトラブル事例などですね。これらのトラブルに関しても、時間はかかるのですが、こちらが全て設定するのではなく、店舗様が自らできるように指示を出していきます。徐々に店舗様が慣れて、自走できるような状態に持っていくことも大切だからです。
 

5.今後の新しい施策はありますか?

オンライン率、評価、セールスの注文、不成立とキャンセル注文、営業時間、この 5 項目に対して運営状態が良い場合、新ブランドを追加導入する際の金額が安くなるというインセンティブを行っていると先ほどお伝えしましたが、長期にわたり運営状態が良い店舗様には、より上のプランを作ろうと考えています。例えばですが、新規ブランドを入れ放題にできたり、優先案内をしたりとか。より高い特典プランを準備し、さらに深く付き合うことを考えています。
弊社のバリューの一つに「愛を持って接する」というのがあるのですが、コミュニケーション方法により、やはり受け取る印象は変わります。店舗様は、「自分たちの考えていることが伝わりにくい」と思われているかもしれないですし、逆もしかりで運営している側からしか見えないものもあります。
もしかしたら、本部は何もやってない、と思われているかもしれない。そういうギャップを解消するためにも、やはり、思いやりや相手目線のコミュニケーションは必要です。一周回って根性論みたいですけど、やはり、データとか数字はもちろんですが、相手のことを思う気持ちや行動、同じ目線で解決していくことが、良いサービス・良い関係づくりへとつながっていくと思いますね。

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まとめ

X Kitchen では最初にフランチャイズ加盟店に健全な経営のための 5 項目を提示し、週・月ごとにそれを踏まえたレポートを提供することにより、データに基づいた改善を促すという明確なアプローチを取っているとのこと。ただ、トラブル対応や交渉の際は、相手の立場や状況を理解した上で同じ目線で会話をすることを重視しており、データ一辺倒ではなく、人と人とのつながりを大切にしていることが感じられます。こうした丁寧なサポートやフランチャイズ加盟店との向き合い方が、注文の不受理・キャンセル率の抑制にもつながっていると思われます。

投稿者: Azusa Miura

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