
コロナ禍の 2021年、仙台市で誕生した「TACOS LOCOS」。オーナーの阿部 光輝氏は、姉妹店の危機をきっかけに「売り上げの多チャンネル化」を決断されました。Uber Eats の視覚的効果を最大化した商品設計と、姉妹店との連携による「戦略的ワンオペ営業」で持続可能な経営を実現。デリバリーを新規顧客との接点として活用し、安定収益を築く「新しい飲食店モデル」の全貌をインタビューを通じて、ひもときます。
コロナ禍で挑む「売り上げの多チャンネル化」、雇用を守るためのデリバリー特化戦略
既存店の危機を突破口に。店内飲食に依存しない「第2の収益柱」の構築

仙台市営地下鉄南北線「愛宕橋駅」から徒歩 7 分。落ち着いた住宅地が広がる仙台市太白区越路エリアのロードサイドで 、鮮やかな色彩が目を引く「TACOS LOCOS」。オーナーの阿部 光輝氏が同店をオープンしたのは、2021 年。世の中がパンデミックの渦中にあった頃です。
「『TACOS LOCOS』よりも前の 2019 年に仙台市の勾当台公園近くに『Trattoria Foresta Di Gufi』というカジュアルイタリアンをオープンしました。しかし、その直後にコロナ禍に突入。営業自粛や時短営業を余儀なくされ、イートイン(店内飲食)のみに頼る経営の脆さを痛感したんです」(阿部氏)
当時、最も懸念したのは共に働く従業員の雇用でした。客足が途絶え、売り上げが激減する中で、いかにしてスタッフの労働環境を確保し、給与を支払い続けるか。その答えとして導き出したのが、イートインに依存しない「売り上げの多チャンネル化」でした。

「もともと飲食店経営のポリシーとして、収入の多様性を持たせたいと考えていました。イートイン、テイクアウト、そしてデリバリー。これらがバランスよく機能していれば、万が一、ひとつのチャンネルが止まっても、他のチャンネル でカバーできるのではないかと。そこで、コロナ禍でも従業員が働ける場として、テイクアウト・デリバリー専門店の『TACOS LOCOS』を 2021 年 11 月に立ち上げたのです」(阿部氏)
オープン前年の 2020 年には、仙台市内で「Uber Eats」がスタート。「Trattoria Foresta Di Gufi」はサービス開始と同時に、「TACOS LOCOS」はオープンと共に加盟しました。
「ユーザー登録会員数の最も多い Uber Eats に加盟することは、より多くのお客さまにお店を知っていただく機会が得られ、宣伝や集客まで任せられる。飲食店にとって気軽にデリバリー業務へ参入できる Uber Eats は飲食店にとってメリットしかない。短期間でもう一つ収益の柱が立てられると考えました」(阿部氏)
コロナ禍により低迷する飲食業界のなか、阿部オーナーは持続可能な経営の第一歩としてデリバリーに活路を見いだしたのです。
Uber Eats で勝つ「視覚的フック」の法則、リピートを促すヘルシーな商品戦略

仙台のデリバリー市場の空白を突く。差別化と「日常食」としてのリピート率向上術
オーナーが新業態として選んだのは、自身の好物でもあった「メキシコ料理」でした。その中でもタコスをメインに据えたのには、単なる個人の嗜好を超えた冷静なビジネス判断がありました。
「デリバリーにおいて最も重要なのは、数ある店舗の中からお客さまの目を止める『視覚的なフック』です。タコスは多彩な具材を使い、彩りが非常に豊か。『Uber Eats』の注文画面に並んだ際、その華やかさは他ジャンルの料理と比較 しても圧倒的に映えると考えました。また、仙台市内において本格的なタコスをデリバリーで提供すれば他店との差別化が図れる、というのも大きなポイントでした」(阿部氏)
その狙いは的中し、デリバリー開始直後から注文が相次ぎました。現在、店内に小規模なイートインスペースは設けているものの、売り上げの大部分を占めるのはデリバリーとテイクアウトだといいます。

なお、日本でタコスといえば、チーズたっぷりの濃厚でハイカロリーなアメリカ(テキサス)風の「テックスメックス」を想像する方も多いでしょう。しかし、阿部オーナーがこだわったのは、本場メキシコのシンプルでヘルシーなタコスでした。
「本場のタコスは、新鮮な野菜とスパイス、肉の旨みをシンプルに味わうものです。満足感がありながらヘルシーに楽しめるメキシコ料理は、重すぎず後味がすっきりしているため、毎日食べても飽きません。実はこの『飽きのこない日常食』という側面が、デリバリーにおけるリピート率を高める要因になっています。現代の健康志向とも合致しているので、一度召し上がったお客さまが『またヘルシーなタコスを食べたい』と、リピートしてくれる のだと思います」(阿部氏)
華やかなビジュアルで新規顧客を引き込み、本場志向のヘルシーな味わいでリピーターを定着させる。「Uber Eats」というプラットフォームの特性を活かした商品設計が、同店の成功を支えています。
利益を最大化する「戦略的ワンオペ」の舞台裏|姉妹店連携による仕込みの効率化

デリバリーを新規客との「接点」へ。テイクアウトと循環させる地域密着型モデル
「持続可能な経営」を実現するためには、売り上げを伸ばすだけでなく、いかにコストを抑え、無理のない運営体制を築くかが重要です。「TACOS LOCOS」では、徹底 した効率化により、基本的に「ワンオペレーション」での営業を可能にしています。
その秘密は、姉妹店との連携と、提供プロセスの簡略化にあります。

「具材やソース、煮込み料理などの仕込みの多くは、設備が整った姉妹店の
『Trattoria Foresta Di Gufi』でまとめて行っています。そこから『TACOS LOCOS』へ搬入することで、店舗での調理時間を劇的に短縮しました。また、タコスの皮(トルティーヤ)は高品質な冷凍品を採用。焼く工程を最小限に抑えることで、注文を受けてから提供するまでのスピードを格段に上げています」(阿部氏)

さらに、デリバリーとテイクアウトが主力であるため、接客を担当するホールスタッフを配置する必要がありません。この「接客コストの削減」が、ワンオペでの持続的な運営を支えています。
「デリバリーで私たちの味を知ってくださったお客さまに、次はテイクアウトで店舗へ足を運んでいただけるよう、デリバリーの商品にテイクアウト専用の割引券を同封する といった工夫を始めています。デリバリーを単なる売り上げの手段ではなく、新規顧客との『接点』として捉え、循環させていくことが、これからの地域密着型店舗には不可欠だと確信しています」(阿部氏)
「TACOS LOCOS」が体現するのは、デリバリーを主役にした新しい飲食店のあり方。コロナ禍という逆境を逆手に取り、柔軟な発想と徹底した効率化で「持続可能な経営」を切り拓くその姿は、全国の飲食店オーナーにとって大きな希望となるはずです。

タコスと本格メキシカン TACOS LOCOS
宮城県仙台市太白区越路17-27
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